私のいる映画館には、七十歳ちかい映写技師さんがいる。なんでも、この道五十年らしい。笑いの奥の目がこわい人。技術以外にも、その人から教えてもらうことは、日常山のようにある。今日「これ、読んでみてください。」と二重に包まれた紙袋のなかから、ボロボロの本を取り出して渡された。表紙が取れている、「映写技術全集」という本だった。すべてのページが黄色く褪せて、古本屋の匂いがした。そんなに簡単に、その人ががんばってやってきた事を、惜しげもなく、わたしなんかに伝えてくれようと、しているんだ。すごい。あしたも、修行。